「おへそのあな」~誕生~
「おへそのあな」(長谷川義史)という絵本のページをめくっていたら、不覚にも目がうるんできてしまった。
お腹の中の赤ちゃんが、お母さんのおへその穴からながめている上下さかさまの世界。お母さんとお父さんとおねえちゃんとおにいちゃんは、赤ちゃんが生まれてくることが待ち遠しくて仕方ない。お花を植えたり、禁酒したり、名前を考えたり。赤ちゃんをめぐる家族のあたたかい様子が、ほのぼのとしたユーモアをもって描かれている。
最後のシーンは、家族が寝ている部屋。お腹の中の赤ちゃんが誰にもきこえないように、つぶやく。「明日、生まれていくからね」。
私も多分このように、両親が待ちわびて、ようやく生まれた第一子だったのだろう。
今、父はアルツハイマーになってしまい、ろくに話もできないが、私を見るとにっこりと笑ってくれる。まるで赤ちゃんのように、身の回りのこともできず、会話もできない父に、確かに残っているのが、家族への温かな気持ちだ。
そして今、妹が、はじめての赤ちゃんを身ごもっている。うちの初孫だ。冬を越えて、春になったら、この世に誕生する。
父:「赤ちゃんをこうやって抱いて帰ってくるのかな」
母:「まだ、生まれてないよ」
父:「なんだ! まだ生まれてないのかよ」
こんなショートコントのような天然の会話が、実家では、毎日のように繰り返されている。
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