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2006年9月 3日 (日)

「リリイ・シュシュのすべて」~青春の残酷~

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DVDで映画「リリイ・シュシュのすべて」岩谷俊二監督を見た。久々に衝撃的な作品だった。

前半は少し冗長で眠く、途中で見るのをやめようかとさえ思った。が、目をおおうような暴力シーンに、ひきつけられ、見終わったら、前半が気になって、長いにも関わらず、もう一度、すぐリピートして見直してしまった。

ストーリーは、単純だ。(以下あらすじ)**************************************************************

リリイ・シュシュというアーティストに傾倒する中学生のいじめられっこ雄一(市原隼人)は、ファンサイトの掲示板を運営している。なかでも、ハンドルネーム:青猫と共感し、ネット上で思いをうちあけあっている。

雄一は高校に進学して、剣道部で星野(忍成修吾)と知り合い、親しくなる。裕福な家庭に育った成績優秀で、模範的な生徒だ。ところが、星野は、剣道部仲間との沖縄離島旅行から帰ってきて、性格が豹変してしまう。

最初は、日焼けしていて髪をドレッドにしている生徒とのささいな言い合いだった。悪態をつかれた星野は、ドレッド頭の生徒に対して机をたたきなげ、彼の髪の毛をナイフで切りおとす。さらに、その後、星野は、ドレッド頭を素っ裸にさせ、田んぼで犬掻きをさせ、かばんを口でくわえてもってこさせるのだ。もってきたところは、さらに顔を蹴飛ばす。

さらに星野は、クラスメートの詩織(蒼井優)をゆすり、援助交際をさせて、アガリを奪う。別の女性のクラスメート久野を工場に呼び出して、集団でレイプする。その工場はもともと星野の家の所有。工場が倒産して、家族離散し、彼の中の何かが狂ってしまったらしい。

かつて仲良くしていた同級生の突然の狂気に巻き込まれ、手下として、彼の行為に加担させられ、苦しむ雄一。その思いをリリイ・シュシュのサイトに書き込んでいく。いちばんの理解者は、ハンドルネーム青猫。「わかるよ。多分、それと同じ痛みを僕も感じているから」

リリイ・シュシュのコンサートで、雄一は青猫と会う約束をする。目印は青りんご。会場で青りんごをもって待っていたのは、なんと、星野だった。叫ぶ雄一。人ごみの中、雄一は星野を衝動的に刺し殺す。

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リリイ・シュシュのサイトで、二人をつないでいたのはリリイ・シュシュの音楽の源とされている「エートス」への共感。これは、心の底からわきあがる抑え切れない衝動・リビドーの象徴だ。得体の知れないものに突き動かされる情熱と苦しみ。その存在を自身の中に感じているのは、雄一も、星野も同じだったということだ。

星野の暴力シーンは、ひたすら残酷だ。いじめる側の思いつきひとつで、周りの連中も流されて、加害者の側にまわってしまう。「エートス」につき動かされて、ブレーキがきかなくなった状態が、徹底的に描かれる。

美しい田園風景と音楽が、余計に彼らの純粋さと悲しさをきわだたせる。やりきれないシーンが多いが、彼らの心の機微が丁寧に描かれており、「エートス」という青春の象徴ともいうべき衝動的なエネルギーがありったけ伝わってくることで、やるせなさと同時に、不思議なカタルシスを感じる。

10代のころは、心にこのような暗い闇を私も抱えて鬱屈していたんだっけ? そうだったような気もするが、もう、感覚的にはわからない。私がこんな境地になることは、年齢的にもう、ありえないだろう。過ぎ去った闇。だからこそ、せつなくて、ほろ苦いのかもしれない。

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コメント

初めまして、達也です。
岩井監督の『リリイ・シュシュのすべて』を
最近観ました。最初に観た後、何だか心にヒリヒリと
する痛みが残り、躊躇したのですが、
昨日再度じっくりと観直して見ました。
色んな発見があったのですが、
この映画は観るものの心に沢山の傷を作るのですが、
再生するエネルギーが観る者にある限り、
心に痛みを伴って<リロード>するのです。
だから、ヒリヒリと痛みながらも、
もう一度観たくなる。<エーテル>的な
エネルギーを感じるのではと、思うのですが・・・。
岩井監督は、確信犯で作ってますよね。
恐るべし、岩井俊二。

P.Sトラバさせてくださいね。

投稿: TATSUYA | 2006年11月24日 (金) 04時14分

鋭いコメントありがとうございます。この映画をみて、漠然と私が感じていたことが、TATSUYAさんの説明ですっきりとわかった気がします。岩井俊二作品には、興味をひかれているので、今後、もうちょっと見てみたいと思います。

投稿: HANA | 2006年11月27日 (月) 00時30分

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