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2006年9月23日 (土)

「運動靴と赤い金魚」~ハッピーエンド?~

イラン映画「運動靴と赤い金魚」(マジッド・マジディ監督)をDVDで見た。イランの子供たちの学校生活(男女別学・2部制)や、家庭、社会風俗をものめずらしく味わいつつ、主役の兄妹(兄アリ:ミル・ファロク・バシェミアン/妹ザーラ:バハレ・セッデキ)がとにかく、めちゃくちゃかわいくて感動! 

ニコッとほほえむ顔。小さい声でささやくところ。目に涙をいっぱいにためて何かを訴えてみつめる顔。はにかんだ困ったような顔。この兄妹は、監督が、いろんな街に足を運んでたくさんの人に会い、話のイメージにピッタリあう、実際に慎ましい暮らしをしている子供(素人)を探し出し、説得して映画出演の交渉をしたそうだ。

なくなった赤い靴はとってもキュート。リボンつきで、古いけれど、何度も直して使いたくなる味わい深い、かわいらしさがある。制服を着て、みな同じように頭を布で包んで学校に行くイランの小学生女児にとって、靴は唯一のオシャレなのだ。

******************************************************************このザーラの赤い靴をアリがなくしてしまったことから、ドラマがはじまる。(以下、あらすじ)

貧しくて家賃も食費も滞納している家に住むザーラとアリは靴をなくしたことを親に言い出せずに、アリの唯一の運動靴を兄妹で交代ではくことにする。男女別学のイランでは、朝ザーラが、午後にアリがそれぞれの学校に行く。ザーラは帰宅して、大急ぎで一足の靴をアリに渡し、アリも大急ぎで学校へ・・・という暮らしがはじまる。

ある日、ザーラは、なくした赤い靴をある女生徒がはいているのをみつけ、アリといっしょに彼女の後をつけた。しかし、その少女が目のみえない父親をつれて買い物へ行くところをみて、ザーラとアリは顔を見合わせ、靴をとり返すことをあきらめて、黙って帰ることにする。そして、アリの運動靴を兄妹で交代ではき続ける不自由な生活を続ける。

アリは、マラソン大会の3等の賞品として運動靴がもらえることを知る。そして、ザーラに新しい靴をあげるためにマラソン大会に参加する。3等を目指して湖畔を走り、上位層につけていたのだが・・・。最後の混戦で、一心不乱に走りすぎて、誰よりも先にゴールテープを切ってしまう。賞品の運動靴をもらうことができず、1等をとったというのに涙目のアリ。「運動靴は?」とたずねるザーラにも答えることができない。マメだらけの足を池の水で冷やすと、その疲れを癒すかのように、赤い金魚がアリの足の周りで泳いでゆく美しいラストシーン。

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人を思う優しい気持ちが、なんだか、うまく実を結ばない。赤い金魚はそんなアリとザーラの純真な心をあでやかに彩り、際立たせる。

ただ、ちょっと気になるのは、最後の終わり方だ。アリとザーラが落胆しているところに、父親が買物から帰ってくる。その自転車かごの中に赤い靴らしきものがチラッとうつって、映画は終わる。この後、父親が靴を子供にあげて、大団円となることを予感させ、その前で寸止めして終了という演出のようだ。私は、一寸、自転車かごの赤い靴の意味がつかめず、巻き戻してもう一度みて、ようやく理解。これは、わかりにくいよ!!

果たして、父親が赤い靴を買ってあげれば、それで二人は万事OK。大喜びなのだろうか。アリのマラソン大会での努力が、うまく身を結ばなかったことの悲しさは、ただ靴が手に入れられなかったということだけでなく、あれだけの努力をしても報われないことがある、という世の無常さではないか。それは、貧しい暮らしの限界をも連想させる。そして、にもかかわらず、その中でやっぱり優しく助け合って生きていく兄妹の姿に、胸をうたれるのだ。それは、生まれた境遇などに限定されない「幸せ」が確かに存在することを思わせる。

そう考えると、父親が靴を買ってくる、という形でのハッピーエンドへの期待を残した終わり方は、私には、釈然としなかった。だいたい、出稼ぎしても家賃が払えない貧乏な父親が、なぜ、この時になって急に赤い靴が買えるのかもわからない。不自然で全体のリアリティーを欠いている。ラストシーンだけ、映画的なテクニックが先行してしまったのように感じる。他の部分がすばらしいだけに残念だ。

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